軒天の塗装方法と費用相場|塗料の種類や単価・おすすめの色も紹介

外壁や屋根の「付帯部分」と呼ばれる場所のひとつに、「軒天」があります。
軒天とは、屋根の「軒」の裏に当たる部分で、家の外壁と屋根の隙間を塞ぐ形でついている板状の部分です。
今回は、軒天の持つ役割のほか、塗装方法や使用できる塗料の種類、塗装にかかる費用について詳しく紹介していきます。

軒天とは

軒天とは、家の壁から屋根が突き出ている部分(軒)の天井のことです。
「軒裏」「軒天上」などと呼ばれることもあります。
屋根が突き出していない家は「軒」がないので、「軒天」もありません。

軒天は、屋根と外壁の隙間を塞ぐためのものなので、雨や雪、ほこり、火災などが屋根裏などに入り込むのを防ぐ役割があります。
そのため、軒天に使用される材料には、通気性が良く燃えにくい材料がよく使用されます。
材料の種類 | 使用されている素材 | 特徴 |
---|---|---|
ベニヤ板・合板 | 木 | ・軽い ・安価 ・耐水性や耐火性は低い |
ケイカル板 | 珪藻土・消石灰・石綿(アスベスト)・水 | ・安価 ・軽くて丈夫 ・燃えにくい ・耐水性や湿度を調節する機能が高い |
スラグ石膏板(エクセルボード) | 鉱石・石膏 | ・燃えにくい ・ケイカル板に比べると高価 |
フレキシブルボード(スレート) | セメント・繊維質 | ・高価 ・衝撃に強い ・湿気に強い ・燃えにくい |
金属板 | 金属 | ・軽い ・燃えにくい ・サビやすい |
軒天の塗装が必要な理由

軒天に使われている素材は基本的に、表面の塗料によって守られています。
そのため、適切なタイミングで塗り替えをしていないと、劣化してしまうのです。
劣化をそのままにしておくと、軒天の役割を十分に発揮できなくなってしまうため、様々なトラブルの原因になってしまうこともあります。
軒天の劣化によるトラブル
- 雨漏り・すがもり
- 劣化した軒天部分から雨や雪解け水がしみ込んで、雨漏りやすがもりの原因になってしまいます。雨漏りやすがもりが起きると、軒天のほか、屋根や外壁、天井なども張り替えが必要になります。
- 害虫・害獣被害
- 材料が破損したり穴が空いたりするほど軒天が劣化した場合、屋根裏に鳥や虫だけでなく、ネズミ・コウモリなど動物が侵入し、糞害などをもたらす可能性があります。一度野生動物の棲み処になってしまった屋根裏は、駆除業者に依頼しなければならず、費用がかさんでしまいます。
- 外観が悪くなる
- 軒天は、下から見ると意外と目立つ部分です。軒天が劣化した家は、外壁や屋根が綺麗でも、古くてボロボロの家のような印象を受けます。
軒天を綺麗で丈夫に保つためには、劣化のサインを見逃さないようにしなければいけません。
ここからは、軒天の劣化の例について紹介していきます。
軒天が劣化している状態の例
軒天の劣化には、大きくわけて4種類あり、劣化の状況によって緊急度やメンテナンスの内容が変わります。
劣化が進んでいる軒天ほど大がかりな補修が必要になり、費用がかさんでしまいます。
そのため、早めの補修や塗り替えが必要なのです。
劣化の状況 | 説明 | 必要な補修 |
---|---|---|
色褪せ | 経年によって、表面の塗料の色が薄くなっている状態 緊急度は高くないが、外観がやや悪くなる |
塗り替え |
塗装のはがれ | 表面の塗料が耐用年数を超えて劣化してしまっている状態 早めに塗り直しを行わないと、軒天の材料そのものが劣化しれしまうおそれがある |
塗り替え |
カビ・藻 | 軒天に湿気がたまってしまっている状態 材料そのものが劣化している可能性がある |
張り替え |
フレキシブルボード(スレート) | セメント・繊維質 | ・高価 ・衝撃に強い ・湿気に強い ・燃えにくい |
シミ | 屋根などから雨漏りしている可能性がある状態 もし雨漏りしていると、軒天を交換しなければいけない |
張り替え |
軒天塗装の方法
軒天の塗装は、基本的には外壁塗装を行うときの方法とほぼ同じです。
ただし、注意しなければいけないのが、軒天は高圧洗浄を行ってはいけないということです。
通常、外壁塗装を行う前には、汚れを落とすために高圧洗浄を行います。
しかし、軒天は屋根の湿度を調節するための穴が空いているため高圧洗浄を行うと雨漏りするのと同じ状況になり、メンテナンスの意味がなくなってしまいます。

1. 足場設営
1階建ての平屋住宅でも、立って手が届かない部分の作業は、安全のために必ず足場を設営します。脚立などで作業をすると事故が起きる可能性が高くなるので、おすすめできません

2. 養生
外壁や屋根、窓など、塗料がついたら困る場所をテープやシートを使って養生します

3. 下地処理
残っている塗料を研磨して落とし、必要であれば金属部分の錆止めを塗ります。下地処理がしっかりできていないと、塗料を塗っても劣化が早くなってしまいます。

4. 下塗り(シーラー)
ベニヤ板やケイカル板などを使用する場合は下塗りとして、シーラーと呼ばれる塗料を塗ります。下地を塗ることで、材料と塗料の密着度を上げて、塗装を長持ちさせる効果があります
5. 上塗り
下塗り後1~2日かけて乾かしたら、塗料で上塗りします。通常、しっかり塗料を塗布するために、2回塗りを行います
また、簡単そうに見えるため、「diyで塗装してみよう」と思う人もいるかもしれませんが、自分で塗装をするのはおすすめできません。
軒天は高い場所にあるため事故が起こる可能性が高く、しっかりとした設備の元でないと危険が伴うからです。
また、下地処理や塗装に失敗すると、家の劣化を早める結果になりかねません。
そのため、軒天の塗装は外壁塗装を行う際などにまとめて依頼するのがおすすめです。
軒天に塗装できる塗料の種類
軒天はその役割から、湿気を調節しやすい塗料や、不燃性の高い塗料がよく選ばれます。
一方、雨に濡れる心配が少ないので、耐水性はあまり重視されない傾向があります。
塗料の種類 | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|
EP(エマルションペイント) AEP(アクリルエマルションペイント) |
3~7年 | 軒天だけ塗装をする場合によく使用される塗料。 塗りやすく、湿度を通す機能や不燃性もある。 |
シリコン | 8~15年 | 湿度を調節する機能が高い。 外壁の塗装でよく使用される塗料なので、セットで施工する場合におすすめ。 |
フッ素 | 8~15年 | シリコンよりも耐久性が高い塗料で、雨に強い性質がある。 外壁塗装と一緒に施工する場合におすすめ。 |
軒天は直射日光が当たることはなく、雨や雪などがつく心配も少ない場所のため、安価な塗料でも比較的長持ちするといわれています。
そのため、軒天のみを塗装する場合、外壁や他の付帯部分と、次の塗り替えの時期が同じになるように、耐用年数を選んで塗装するのがおすすめです。
代表的な塗料
- ビニデラックス300(関西ペイント)
- アクリルエマルション塗料。刷毛でもローラーでも塗りやすい。Amazonなどでも購入可能。
- エンケースG-Ⅱ(日本ペイント)
- 水性エマルション塗料。ヤニやしみをつきにくくし、防カビ・防藻性能がある。
- ニッペノキテンエースセラ(日本ペイント)
- シリコン系で、軒天専用の塗料。ほこりなどがつくにくく、湿気を通す機能も高い。
軒天塗装にかかる費用相場
軒天のみの塗装にかかる費用の相場は25~40万円です。
外壁と同時に施工する場合、軒天の作業のみにかかる費用は5~20万円が相場です。
塗装範囲 | 軒天のみ塗装する場合 | 外壁と同時に施工する場合 |
---|---|---|
40㎡ | 25~35万円 | 5~15万円 |
50㎡ | 8~15年 | 6~18万円 |
60㎡ | 27~40万円 | 7~20万円 |
外壁と同時に塗り替えをしてもらう場合、外壁塗装で設営した足場をそのまま使うことができます。
足場の設置には15~20万円ほどかかるため、外壁と同時に施工すれば、最大で20万円を節約することが可能です。
また、業者によっては、軒天や雨樋などの付帯部分と呼ばれる場所の塗装は、おまけとして安くしてくれることもあります。
軒天塗装用の塗料の単価
外壁塗装に使用される塗料の単価は、1,000円~3,000円です。
塗料は基本的に、耐用年数が高いほど、単価も高くなる傾向があります。
塗料の種類 | 単価 | 50㎡の場合の塗料の費用 |
---|---|---|
EP・AEP | 1,000~1,500円 | 5~8万円 |
シリコン | 2,300~3,000円 | 12~15万円 |
フッ素 | 2,700~3,300円 | 14~17万円 |
軒天のみで塗り替えを依頼する場合、塗料の費用のほかに足場代(15~20万円)と、施工費用(全体の約20%)が加算されます。
塗料名 | 塗料の種類 | 単価 |
---|---|---|
ビニデラックス300 | EP・AEP | - |
エンケースG-Ⅱ | AEP | 1,880~1,470円 |
ニッペノキテンエースセラ | シリコン | 2,280~2,360円 |
軒天の色の選び方
軒天は、多くの場合、白やクリーム色など明るい色をおすすめされます。
日が当たらない場所なので、少しでも明るく見せるためです。
しかし、白だと汚れやシミなどが目立つため、メンテナンスの頻度が高くなってしまうというデメリットもあります。
外壁や屋根と同時に塗り替えを行う場合は、壁や屋根と同じ色にすると、家全体に統一感が出ます。
また、他の付帯部分やドアなども同様にアクセントカラーを使用すれば、統一感を保ちつつ個性的な仕上がりにすることもできます。




まとめ
軒天は、雨漏りや火災から家を守る大切な役割を持っています。
塗料の劣化を放置すると、軒天そのものも劣化して、家の寿命を縮めることになります。
そのため、適切なタイミングで軒天の塗り替えを行うことは大切です。
軒天の色があせてきたり、塗装の剥がれなどが出てきたりしたら、塗り替えのタイミングです。
カビや藻が発生したり、シミが広がったりしている場合は、塗り替えではなく張り替えが必要になります。
軒天の塗り替え費用は、25~40万円ほどかかるのが相場です。
外壁や屋根の塗装と同時に行うときは、足場にかかる費用をまとめられるので、15~20万円程度節約することができます。
軒天の塗装が必要になるときは、ほとんどの場合、外壁や屋根も劣化しています。
そのため、できる限り外壁や屋根と同時に施工するのがおすすめです。