シロアリ駆除の確定申告と雑損控除とは?費用を抑えるためにできること

今年、シロアリ駆除をした人は、確定申告をするとき必ず行っておくべきことがあります。
それは、「雑損控除」です。
実は、確定申告のときに、雑損控除の手続きを行えば、シロアリ駆除の費用の一部が、所得税として戻ってくることがあるのです。
少しでもシロアリ駆除の費用を安くしたい人は必見です。
確定申告の手続きは面倒そうですが、実はそんなに難しくはありません。
そこで、今回はシロアリ駆除をするときに知っておきたい、「確定申告におけるシロアリの駆除費用の雑損控除」について解説します。
シロアリ駆除の費用は雑損控除が適用される
「雑損控除」とは、資産を災害や盗難、横領などで失ってしまった場合に、所得税の一定の控除を受けることができる制度です。
下記のいずれかの場合に限られます。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難
- 横領
シロアリが発生して被害を受けた場合は、上記のうち「害虫その他の生物による異常な災害」に該当するので、条件を満たせば雑損控除を受けることができます。
シロアリ駆除費用の雑損控除が受けられる条件は、以下の2点です。
- 被害を受けた建物の納税者、もしくは納税者と生計をともにする親族でその年の総所得金額が38万円以下
- 被害を受けた建物が日常生活に必要であること
所得税は、1年間の総所得から、必要経費(雑損控除も含まれる)を差し引いて、そこに税率をかけることで算出されます。
つまり、雑損控除を受けることで、支払う所得税の金額を減らすことができるのです!
雑損控除を受けるには、毎年2月~3月に行う確定申告で必要書類を提出し、申告をする必要があります。
以下で、シロアリ駆除費用が雑損控除される条件や、具体的な申請方法を解説していきます。
シロアリ駆除費用を雑損控除できる条件
シロアリ被害は雑損控除の対象ですが、全てのケースが当てはまるというわけではありません。
雑損控除の対象になるにはいくつかの条件を満たしている必要があります。
その条件が以下の2つです。
- 被害を受けた建物の納税者、もしくは納税者と生計をともにする親族でその年の総所得金額が38万円以下
- 被害を受けた建物が日常生活に必要であること
雑損控除の申請をできるのは、「建物の納税者」「納税者と生計をともにする家族や親族」のどちらかです。
家族や親族の場合はその年の収入が38万円以下であることが条件となります。
また、被害を受けた建物が「日常生活に必要であること」も忘れてはならない条件です。
被害を受けた建物に住んでいる、倉庫に生活用具を入れている、というように日常生活に必要不可欠な建物のみが雑損控除を受けられます。
上記2つの条件を満たしていれば、雑損控除の対象となるため、自身の状況と照らし合わせてチェックしてみましょう。
雑損控除でどれくらい税金が安くなる?
確定申告によって、どれくらいの金額の税金が安くなるのか、気になるところですよね。
以下では、シロアリ駆除の控除金額の計算方法を解説します。
計算例もありますので、ご自身の家庭ではいくら控除が受けられるのか試算してみましょう!
控除される金額の計算方法
シロアリ駆除の費用を雑損控除できる金額は、下記の2つのうちいずれか多い方の金額です。

※損害金額:シロアリによる家財の資産価値の減少分
災害関連支出:シロアリ駆除費用と修繕費用の合計
上記の計算式に出てきた、差引損失額の求め方は以下です。
- (差引損失額)=(損害金額)+(災害関連支出)-(保険金などにより補てんされる金額)
具体的な例
総所得300万円のAさんがいます。
Aさんは家にシロアリが発生したので、業者に依頼し、駆除が完了したところです。
- 総所得:300万円
- シロアリ駆除費用:20万円
- 家の修繕費用:30万円
- 保険金:受け取りなし

②の金額の方が多いので、②の40万円が雑損控除として適用されます。
結果、Aさんは、40万円を所得税から控除できるということがわかりました!
なお、駆除にかかった費用が数万円で済んだ場合、①と②の計算結果がどちらも0円以下になることがあります。
その場合は雑損控除の額が0円になるので、控除は受けられません。
詳しくは、国税庁のシロアリ駆除費用に関するページを参考にしてみてください。
災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
所得税は雑損控除でいくら安くなるのか
先ほどの計算式で、雑損控除の金額がお分かりいただけたでしょうか。
注意してほしいのは、この雑損控除の金額分そのまま、税金が安くなるというわけではないという点です。
所得税は下記のように、総所得から各種控除額を差し引いて、そこに税率をかけて算出されるからです。
- (所得税)=((総所得)―(控除))×(税率)
雑損控除は、上記の控除にあたるので、雑損控除によって税金が減る金額は「雑損控除×税率」となります。
この税率は、所得によって変動します。
先ほどのAさんだと、所得300万の税率は10%で、雑損控除額が45万円です。
(雑損控除45万円)×(税率10%)=4.5万円
よって、Aさんの所得税は4.5万円安くなるということがわかりました。
実際の税率は、下記の国税庁のホームページでご確認ください。
所得税の税率|所得税|国税庁
雑損控除を受けるための確定申告の書き方
シロアリ駆除費用を確定申告する手続きは、簡単です。
ただ、会社員の方など、給料から所得税が天引きされている場合は、普段は確定申告が必要ないので、確定申告の手続きにあまりなじみがないかもしれません。
どのように雑損控除を受けられるのか、見ていきましょう。
確定申告は、下記の3ステップの流れで行います。
- 必要書類3点を揃える
- 確定申告書に雑損控除に関する事柄を記入
- 領収書と、必要な方は源泉徴収票を添付して、税務署に提出する
税務署に行かなくても、インターネット上で確定申告をすることもできますので、活用すればより簡単に確定申告ができます!
【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は下記の3点です。
- 確定申告書
- シロアリ駆除・修繕工事の領収書
- 源泉徴収票の原本(給与所得のある方)
確定申告書は所定の用紙で、税務署や自治体の窓口で手に入ります。
国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
平成30年分 確定申告特集
シロアリ駆除費用と、修繕工事にかかった金額を証明するために、領収書が必須です。
会社員など給与所得のある方は、年末に会社からもらう、源泉徴収票の原本も添付します。
シロアリ駆除費用が控除の対象外になるケース
シロアリ駆除費用は、上述の条件にあてはまれば雑損控除を受けられます。
しかし、場合によっては対象外となってしまうこともあるため要注意です。
確認しておきたい注意点は下記3点です。
- シロアリの予防施工を行った場合
- 事業用資産や別荘でシロアリ駆除を行った場合
- 自分でシロアリ駆除を行った場合
雑損控除は、あくまでも損害を受けた資産が対象です。
そのため、予防に関しては雑損控除の対象にはなりません。
シロアリ予防対策と駆除対策の両方を同時に行うような施工の場合は、予防費用と駆除費用を分けて記載してもらうように頼みましょう。
上述の条件に、「被害を受けた建物が日常生活に必要であること」というものがありました。
つまり、居住用の建物や生活に必要な倉庫などでのシロアリ駆除は雑損控除の対象ですが、日常生活に関係のない建物は対象外です。
事業用として所有している建物や別荘の場合は雑損控除の対象にはなりません。
また、注意していただきたいのは、自分でシロアリ駆除を行った場合です。
雑損控除の対象は業者によるシロアリ駆除のみです。
自分でシロアリを駆除してしまうと「雑損控除」の対象外となってしまうため要注意です。
「災害減免法による所得税の軽減免除」が使えることも
その年の所得金額が1,000万円以下の人は、雑費控除のほか に「災害減免法による所得税の軽減免除」という制度も利用できます。
この制度の対象になるには、下記3点の条件すべてを満たしている必要があります。
- 災害によって受けた住宅や家財の損害金額が、その時価の2分の1以上
(損害金額 = 保険金などにより補てんされる金額を除いた額) - 災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下
- その災害による損失額について雑損控除を受けない場合
つまり、被害を受けた住宅・家財の価値の半分以上の損害が出るほどの、大規模なシロアリ被害のときのみが対象となります。
また、条件の3つ目に「雑損控除を受けない場合」とあります。
「雑損控除」と「災害減免法による所得税の軽減免除」を同時に受けることはできないということです。
軽減または免除される所得税の金額は、所得に応じて下記のように変わります。
総所得 | 軽減または免除される所得税の額 |
---|---|
500万円以下 | 所得税額の全額が免除される |
500万円 〜 750万円 | 所得税額の2分の1が軽減される |
750万円 〜 1,000万円 | 所得税額の4分の1が軽減される |
条件に当てはまる方は、雑費控除と災害減免法による所得税の軽減免除の2つを比べ、ご自身にとって有利な方を選びましょう。
詳しくは、下記のサイトを参考にしてみてください。
災害減免法による所得税の軽減免除|国税庁
自治体のシロアリ駆除の補助金について
シロアリ駆除や対策に補助金を交付している市区町村も、存在します。
しかし、補助金の相場は1万円程度であることから、シロアリの駆除費用を全てまかなえるというほどではありません。
そのため、補助金を受け取ってもほとんど実費で支払わなければならないのが現状です。
以下の記事でも、補助金・保険について詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
シロアリ駆除って補助金が適用されるの?制度について詳しくご紹介
まとめ

シロアリ駆除は、条件を満たせば雑損控除の対象になります。
シロアリ駆除には決して安くない費用がかかりますが、このような制度を賢く活用して、家計の負担を軽減できたらうれしいですよね。
扶養控除や医療費控除などの申告と一緒に確定申告をしたり、電子申請を活用したりすれば、より簡単に確定申告できます。
ぜひ、この記事を参考にしながら、雑損控除の利用を検討してみてください!