羽蟻がすべてシロアリではない?羽蟻の種類と見分け方

「玄関先に大量の羽蟻がいたり、風呂場に羽蟻が発生したりしているのを発見すると、シロアリか、害虫か、とおののいてしまうものです。
しかし、ここで重要なのは、羽蟻の正体を見極めることと、大量発生した理由を知ること。
羽蟻は、その全てがシロアリだというわけではありません。
まずは、羽蟻の特徴を見比べ、「シロアリなのか」「クロアリなのか」を明らかにし、それにふさわしい対応をとることが大切です。
ここでは、羽蟻の見分け方や主なシロアリの種類、クロアリとの違いなどを解説していきます。
羽蟻にはシロアリとクロアリがいる
日本で「羽蟻」と呼ばれる昆虫には、「シロアリ」と「クロアリ」の2種類があることをご存じでしょうか。
羽蟻を見かけるとついつい「シロアリか?」と考えてしまいがちですが、実際にはシロアリでない羽蟻も多数存在するのです。
クロアリであれば建物に直接害を及ぼすことはほとんどありませんが、シロアリの場合は、家の木材を食べたり、コンクリートや断熱材にも大きな影響を及ぼしたりします。
大量に発生した羽蟻がシロアリの場合は、早急な対応が必要です。
まずは「シロアリの羽蟻なのか」「クロアリの羽蟻なのか」を見極めましょう。
シロアリとクロアリの違いについて、下記にまとめていますので参考にしてください。
シロアリ | クロアリ | |
---|---|---|
分類 | ゴキブリ目シロアリ科 | クロアリ |
触覚の形 | 鎖状でまっすぐ | くの字型 |
胴体部分 | 寸胴 | くびれがある |
羽の形 | 前後の羽の大きさが同じくらい | 前の羽のほうが大きい |
発生時期 | 4月~7月ごろ | 6月~11月ごろ |
特徴 | 羽が取れやすい | 簡単には羽が取れない |
まずは、羽蟻の見た目に注目しましょう。
クロアリの羽蟻は、前の羽根が大きく、くびれた腹部をもっています。触覚が「くの字」形に曲がっているのも特徴です。
一方のシロアリの羽蟻は、前後の羽がほぼ同じ形をしており、触覚はまっすぐです。
数珠状になっています。
「羽蟻をよく見てもその種類が見極められない」という場合は、数匹捕まえて容器に保存しておきましょう。
専門の業者に駆除を依頼する際に、現場の判断に役立つでしょう。
次に、先程表で紹介した、それぞれの特徴について詳しく説明していきます。
シロアリの特徴と生態
シロアリの名前はよく聞きますが、その特徴や生態について詳しく知らず、クロアリとの違いがわからないという方も少なくないはず。
ここでは、シロアリの特徴や生態を改めて見ていきましょう。
シロアリは、その名前からアリの一種だと考えられがちですが、分類学上は実は、ゴキブリの仲間。
「ゴキブリ目シロアリ科」に属しています。
また、不完全変態卵から幼虫、成虫へと変態する、「不完全変態」で幼虫と成虫でほとんど変化がありません。
見た目の特徴は、触覚が数珠状になっていること。
さらに、胸部の幅がやや狭くなっているものの、体形は寸胴。
4枚の翅(はね)がほぼ同じ大きさなのも、クロアリとは大きく異なる点です。
主食は植物の繊維質で、家の木材やコンクリート、断熱材などを食べ進めていくため、被害が進むと建物のゆがみなどにもつながりかねません。
「シロアリ」という名前がついているため、羽蟻の段階から白いのだと思い込みがちですが、実際はそうではありません。
シロアリの羽蟻は白くなく、色からは識別できません。
触覚や体形などから判断するのが手っ取り早いでしょう。
クロアリの特徴と生態
次に、クロアリの特徴と生態を確認しましょう。
クロアリはシロアリとその見た目などが似通っているので混同しがちですが、分類学上は「ハチ目ススメバチ上科アリ科」に属しており、まったく違う生き物です。
完全変態卵から幼虫、サナギをへて成虫へと変態する「完全変態」であるのも、シロアリとの違いのひとつです。
よくよく観察するとその見た目もシロアリとは異なっており、触覚は「くの字」状。
腹部の付け根が細くくびれていて、4枚ある翅の上の2枚が下の2枚より大きいのもシロアリとの大きな違いです。
必要に応じて蟻道をつくることがありますが、大半はそのまま歩き回るため、外界で活動しやすい強じんな外骨格をもっています。
基本的には肉食ですが、多種多様なものを食べ、家屋内に巣をつくります。
ただし、シロアリほど木材を侵食することがないため、家屋への害はありません。
クロアリはせいぜい「腐った木材」に巣をつくる程度。
クロアリの羽蟻が多数飛来したからといって、緊急の対策は必要ないのです。
たとえ、大量に発生したとしても自力で簡単に駆除できるのも、シロアリとの大きな違いだといえます。
日本で被害を出しているシロアリの種類
日本で報告されるシロアリ被害は主に下記の3種類の白蟻によるものです。
それぞれの特徴について、比較してみました。
ヤマトシロアリ | イエシロアリ | アメリカカンザイシロアリ | |
---|---|---|---|
被害地域 | 北海道北部を除く、日本全域 | 中部地方以西の太平洋側 四国、九州の沿岸部 | 全国に点在 |
羽アリの飛翔時期 | 4~5月 | 6~7月 | 7~9月 |
被害箇所 | 水回り付近 | 床下から屋根裏 | 建物全体 |
特徴 | 特定の巣を作らず、小さな集団で移動 | 地中に巣を作り、大きな群れをなす | 乾いた木の中に生息 |
見た目 | 黄色の身体と頭部は黒褐色 | 褐色の頭部に橙黄色の身体 | 頭部は赤褐色、他は黒褐色。 |
日本でシロアリ被害は、「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」によるものが全体うちほとんどを占めると言われています。
ヤマトシロアリは北海道北部を除いて全国的に分布しており、羽蟻が飛翔する時期は4~5月。
流し台や風呂場といった水回り付近に生息するのは、水を運ぶ能力がないためです。
特に巣をつくらず小さな集団で移動します。
体長は4.5~7.7mmで、頭部は黒褐色。黄色の身体と、暗褐色の羽をもっています。
イエシロアリは、中部地方以西の太平洋側や四国、九州の沿岸部などで多く生息しています。
6~7月の夕方に羽蟻が飛び立ち、地中に巣をつくって大きな群れで定住します。
水を運べるため、床下から屋根裏まで、木材を湿らせつつ食べ進めます。
体長は6.5~8.5mmで、卵型。褐色の頭部に橙黄色の身体をしており、淡黄色で透明な羽をもっています。
また、最近急速にその勢力を拡大しているのがアメリカカンザイシロアリです。
ヤマトシロアリやイエシロアリとは異なり、乾いた木の中に生息するのが大きな特徴。
日本のごく一部のエリアで被害が確認されているシロアリです。
海外などから輸入された木材に紛れ込んでいたというようなケースが報告されています。
木材の表面に開けた穴からふんを出すため、小さな粒状のものを床に発見したときには、アメリカカンザイシロアリに原因があるかもしれません。
羽アリが大量発生した際の対処方法
自宅で羽アリを見つけた場合は、慌てず掃除機やポリ袋を使って応急処置をしましょう。
殺虫剤を使わないのは、その成分に含まれる忌避性によってシロアリが巣から逃げて分散してしまうことを防ぐためです。
シロアリはとても弱い生き物ですので、掃除機で吸い込む際の圧力で死んでしまいます。
ポリ袋を使う場合は、発生場所に覆いかぶせるようにして羽アリを取り込んでください。
このように、応急処置としては掃除機やポリ袋が活用できますので、羽アリが出た際には参考にしてみましょう。
シロアリの場合は早急な駆除が必要
シロアリ被害のサインは、次のようなものです。
- 床や畳を踏んだときにフワフワする感触がある
- 風呂や洗面所といった湿気の多い場所の柱に穴が開いている
- スムーズに開閉できていたドアや雨戸が開けられなくなる
- 家の中にシロアリの羽蟻が飛んでいる
この中でも特に気づきやすいものが、大量の羽蟻の発生でしょう。
羽蟻の見た目からシロアリだと判明した場合は、シロアリの被害にあっている可能性が高いため、駆除方法を早急に検討しなければなりません。
最近では、自分の手で駆除するための薬剤も販売されていますが、その被害状況を把握し適切な駆除方法を選択できるのは、何といっても専門の業者です。
不十分な駆除でシロアリを再度発生させてしまうと、建物の構造が弱まったり、資産価値が下がってしまったりします。
「シロアリの被害を確認」「シロアリの被害が疑わしい」というときには、すぐに専門業者に依頼してください。
また、羽蟻がクロアリの場合でも、その数が多い場合は、業者に相談してみることをおすすめします。
まとめ
羽蟻が家の中に発生したという緊急事態にこそ、冷静にその種類を見極めることが大切です。
羽蟻がすべてシロアリというわけではありません。
クロアリとシロアリには、その外見に特徴があり、しっかり見分けられます。
「今すぐにでも対応すべきなのか」「しばらく様子を見ておいていいのか」を適切に判断することは、自宅を守ることにもつながります。
大切なわが家をシロアリの被害から守り、家族の笑顔を守るためにも、ぜひこの記事を活用してください。
また、何らかのシロアリ予防策を講じることをおすすめします。